
デビュー詩集『とても小さな理解のための』が早くも5刷。
現在最もメディアから注目を集める詩人・向坂くじら、初のエッセイ集。
「まずもって、あの夫というやつは臆病すぎる。合理的であるということを隠れ蓑に、ただ予期せぬものの訪れを怖がっているだけ。なんだい、なんだい、びびりやがって。くされチキンがよ。だいたい、すべて計画通りの毎日なんてつまらないじゃないか。(中略)そのくされチキンがある日、なんの前触れもなく急須を一式買って帰ってきた」(本文より)
暮らしより大切なものがある人間は、いかにして暮らせばよいのだろうか?
●著者略歴
向坂くじら(さきさか・くじら)
詩人、国語教室ことぱ舎代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」で朗読を担当。デビュー詩集『とても小さな理解のための』(しろねこ社)のヒットで、新聞・テレビなどのメディアから。一九九四年生まれ、埼玉県在住。
《読者からの感想》
●かなり稀に見るレベルのおもしろい文章。エッセイっていかに個別的なものを普遍的なものに広げて書くかみたいなものやと思ってるねんけど、これはすごかった。そんな細かい場面をそう表現するか、という感じ。
●読みながら線を引きたくなるエッセイ。めちゃおもしろかった。するすると読める語り口でありながら、読む者を立ち止まらせるポイントが随所にある。安易に読み流すのを躊躇わせてくる。
●こんなに愉快な夫婦愛の考察があるのか……。
●「好き」に飲み込まれそうになったり、それでも自分を観察対象として描写し続けたり、その揺らぎの手触りがとても良いエッセイ。
●警戒していても生活から染み出す美しさが、たやすく闘う足を引き止める。最後の章『春』が特にもう……私はこういうエッセイに本当に弱い。
●「結婚して二年になるが、遊びで愛をやっているわけではない。」(p18)夫や、夫の家族。自分の母親や、時には自分の身体と、微妙にズレたり重なったりしながら、ちょうど良い"適温"を探す生活の冒険。めちゃくちゃ良いです✨
●ものすごくおもしろくてどうしても感想を上手に言えない。きれいな文章が読めてうれしい気持ち。「困ったことに、暮らしというやつは、それでも、どうしても、美しくてしかたない。」
●向坂さんらしい、鋭利で怜悧な言葉で貫かれた、夫と自身の観察日記だった。ブログの頃のような破壊的な怒りから、静かに突き刺すような筆致に変わったと感じた。でも、どちらの文章も好ましく思う。『違国日記』の槙生ちゃんのことを思い出した。