

家族にも友人にも本音を言うのが苦手だった。何年生きても薄い関係しか築けないのが、ずっとコンプレックスだった。自分を晒すことにどうしても抵抗があり、踏み込むのも踏み込まれるのも躊躇した。そうやって生きてきたから、誰かの友情や愛情を目の当たりにすると、決まって後ろめたい気持ちになった。冷めたふりして飄々と生きているつもりだったけれど、本当はものすごく寂しかった。(本文より)
わたしはずっと、君みたいになりたかった。
暮らしレーベル、第3弾。
『常識のない喫茶店』『書きたい生活』著者・僕のマリの、原点。
秘めながら漏れ出す激情の奔流。
こんなにドキドキするエッセイ、他にない。
【著者略歴】
僕のマリ(ぼくのまり)
文筆家。一九九二年、福岡県生まれ。著書に『常識のない喫茶店』『書きたい生活』(ともに柏書房)『まばゆい』(本屋lighthouse)がある。また、自主制作の日記本も発行している。
《読者からの感想》
●これは独白のような本。胸が高鳴る煌めいていた日常を、まだ到底苦しい時の話を綴っている。その時に感じた諦念、縋れなかった弱さ、青春と音楽と恋の効能を包み隠さず「いかれた慕情」として自白している。本書を通じて感じるのはそんな「いかれた慕情」を愛しているということ。とても素敵な本でした。
●やっぱこのシリーズいいわ。読んでいて、静かな気持ちになる本。タバコを吸ってる女性に対する評価のグラデーションがなさすぎっていうとこの言語化、すごすぎ。
●懐かしいあの頃の感情が蘇ってくるような懐かしさやどこかに消えてしまいそうなエモーショナルさが感じられて、そして、その中で静かに熱く溢れ出るマリさんの言葉と思いに心を掴まれて胸がキュッとなりました。マリさんの文章や言葉の紡ぎ方が優しくて好きでした。
●彼女はどうしてここまで自分を俯瞰できるのか。沢山の経験をして、痛みや悩みがあって、幸せも熱量もそこにあるのに、全部が全部どこか1枚フィルターを通した物語のように見えて実話なのか創作なのかわからなくなる。その視点の位置と距離感が僕のマリさんのずっと面白いところでもあるな。
●文章の中に喜びも、切なさも、怒りも全部詰め込められていて、それが僕のマリさんにしか表現できないような独特な文体で書かれていて、私はすっかりファンになってしまった。
●エッセイなのに物語を読んでいると思ってしまう。そのくらい文章に引き込まれてしまった。
●スーパーカーや銀杏BOYZをぐずぐずと聴いたり、新宿の小さな映画館で映画を一人で見て、満員の電車に揺られながら帰ったりしたときに、ぼうっと感じる無敵な気持ちを思い出した。読んでると、なんだか、そういう気持ちになれた。
●何気ない日常なのに、マリさんが書くと特別なものに感じる。やはり特別な人なんだと思う。
●どれも良かったが、特に「ひかりのうた」「天使の背中」「確かに恋だった」「加速し続ける」の4つが素晴らしかった。